【人】 天狗 1回生 ヨシツネそれからは、あっという間だった。 ご両親に挨拶したり、オベロン様に託児所の相談に行ったり、あれをやったりこれをやったり。 けれど、どうしても不安なことがあった。 僕は、まだ幼い頃に故郷から攫われた。 子供と接するなんて、どうすればいいのかわからなかった。 周りの暖かい応援に反して、僕は誰にも相談できずに疑問を胸の奥に沈めたまま。 だから、とある人に相談を持ち掛けてみた。 「兄様、貴方ならどうする?」 キャメロット地下で兄様に打ち勝ったあの日、手に入れた刀。 僕が憧れた兄様の剣技、その象徴だったから。 答えなどない、わかっている。 けれど、兄様はいつも口癖のように言っていた言葉がある。 今思えば、闇に呑まれるとわかっていた兄様の覚悟の現れだったのだろう。 (316) 2023/06/30(Fri) 21:14:07 |