【人】 生物学者 アマノ【〜1年後〜】 [俺達の見慣れた、あの繊細な刺繍入りの白服に愛用の黒いヴェール。 窶れた頬に薄く紅を刺して棺に横たわるチャンドラは、でも、ただ眠っているようにしか見えなかった。 その日は抜けるような青空で。 建物外に広がる庭園は今が盛りとばかりに数々の花が咲き誇り、そこにチャンドラが立って微笑んでくれるなら、それはここに居る誰より似合いの光景のように思われた。 でも今日、俺達は、彼女を見送らなくてはいけなくて。] ありがとう。 ────おつかれさま、チャンドラ。 [彼女だけに伝わるくらいの声で小さく告げながら、1人1人、彼女の棺へと花を手向けていく。 可憐な白いリシアンサスは、華やかすぎるバラよりも、香りの主張が強い百合よりも、彼女にとてもよく似合っていた。 俺は、神など信じないし、ゆえに祈りはしないけど。 でも、チャンドラの魂が辿り着くのは花が咲き緑が揺れる穏やかな場所であれば良いと、切に思った。] (320) 2022/07/23(Sat) 12:19:52 |