【人】 灯守り 立春─ 時は少し遡り ─ [右手と右足を同時に出しながら 会場に足を踏み入れた直後のこと。 聞き覚えのある声に名前を呼ばれて振り向いた。>>290] 葵ちゃん! 今日はお着物なんだね。素敵だぁ……! [太陽光を反射した雪原よりも眩しい輝く笑顔。 きっちりと切り揃えられた白銀と鮮やかな萩の髪。 普段とは一味違う華やかな和装で駆け寄ってきた友人に、 ほっとそれまでの緊張を解いて微笑み返す。 葵ちゃんも、少し先輩ではありながら年齢が近しく 蛍の任を経て灯守りに就任した経緯も相俟って、 出逢った当初から親近感を抱いていた子だった。 統治域は決して近くはないにも関わらず、 先代同士もどうやら仲が良かったらしい。 蛍として師匠の弟子だった頃は 会合に参加したことはなかったから、 葵ちゃんと出逢ったのは灯守りになってからだった。 まだ何もかもが手探りで、行き詰って途方に暮れて お姉ちゃんの顔を見に里帰りしたときのこと。 何十年も前から灯守りをしている方ばかりではなくて 同い年くらいの子も居るのだと聞き知ってはいたけれど、 実際に会って話すのは初めてだった。] (320) 2022/01/17(Mon) 22:26:15 |