【人】 3年生 武藤景虎[何見たら良いかもわからんのだが、人に聞くのも、なんかこう、おかしいだろうし。 闇雲に歩いて辿り着いたのは小ぢんまりとした絵画の展示スペースだった。 作品名も作者名も知らない名前だ、というのは芸術に疎いからだけではなさそうで。 人も疎らなので、比較的有名な絵ではないコーナーなのだろう。 地域文化の振興用らしく、この辺りの地域の名前が入り口にあった気がする。 この辺りの地図が張り出されていて、地域に所縁のある作品が並んでいるようだった。 退屈そうだな、と思いながらも小さいスペースだし、と一通り見て回ろうとして。 その中のひとつの絵、何の変哲もなさそうな風景画の前で足を止めた。 なんとなく見覚えがあると思えば、美術館に来るまでの風景のようだ。 目の醒めるような青空と、緑。 さっき見たばっかで新鮮味もないはずの景色で、何なら実物の方が綺麗なものだとすら思うのに。] (323) 2022/09/02(Fri) 21:59:18 |