【人】 1年生 朝霞 純【受け継がれていくもの】 >>299 [工藤さんは繰り返す。 何度もパンを焼く。パンを食べる。そしてまたパンを焼く。 繰り返される単調な日常の中で、工藤さんのパン作りも、また日常の一部のように。 でも、多分、彼女にとってのそれは、ただの日常の一風景などではなくて。 意識しなければ、無為に過ぎていくこともある、そんなありふれた時間などではなくて。 彼女にとっては、大切なこと。 同じように見えても、一つ一つに意味のある時間。 私はそっと側で彼女のパン作りを見守った。 手の洗い方が変わるのも、粉のふるい方が変わるのも、オーブンを覗くときの仕草が変わるのも。 一見、大した差異に見えない全ての変化が、彼女にとっては大きな違いだと知っていたから。 工藤さんは小泉さんのいたパン屋に来てくれるという。 恐らく、自分のパンに足りないピースを探しに来るのだろう。>>301>>302 私は香坂さんと甘夏みかんクリームパンを食べながら、猫の形のクリームパンを食べる工藤さんを眺めた。] (324) 2022/09/19(Mon) 14:47:24 |