【人】 1年生 工藤美郷──回想・笑う松本先輩と── [笑った顔を見せることは、おそらく無い。 けれど、工藤の分まで松本先輩が笑ってくれた。 ぽつぽつと雨雫を落とすように優しく、根気よく説明してくれた。] そういう意味なら、既に泣いています。 [表情の一つも変えぬまま告げる。それから、松本先輩が映る瞳を逸らして、窓の外に向けた。 武藤先輩と香坂さんを送った魔法は、とうの昔に消えている。けれど工藤の記憶には克明に焼き付いていた。 きっと目覚めた後も、あの華やかな魔法を思い出すのだろう。 みんなを励ましたいという心に、形を与えた魔法。 何度だって瞼の裏に描くのだろう。 それが、松本先輩との最後の会話になったかもしれない。]* (342) 2022/09/11(Sun) 21:40:41 |