【人】 ][『月』 エーリク[ 殺風景と言っても差し支えない部屋に、 さて客は居たか、否か。 どちらにしても、珈琲マシンのスイッチを入れた。 やがて、張り詰めた空気を和らげる 香ばしい香りが漂うことだろう。 ] 選択、……正直、よくわからない どうでもいいと言い換えてもいい [ 例えば父母、――生きていれば良いとは思う あれから一度だって手紙すら寄越すことはないが 別れた日にわずかに膨らんでいた彼女の腹からは 弟だか、妹だかが産まれてもう自由に歩き、 簡単な言葉なら会話もできていることだろう。 ――それが正しい、兄が証持ちであるなど 知らないほうがきっと幸せだ。 だが、彼らだっていずれ死ぬ。 それが明日か、何十年か先かという話で。 どうせ死ぬ。 ] (350) 2022/12/17(Sat) 21:43:09 |