【人】 鬼 紅鉄坊[ 残酷な程あっさりと名の話が切り捨てられ>>289 昨日は半ばで終わりを告げた話が再開した。 聞き漏らさぬよう、鬼は頭を少し前に垂れて耳を低くする。 肌にも重みにも、命の主張が感じられない白い手が、 襤褸の着物から覗く筋肉質な影色に添えられて。 近い距離で覗き込み、昏い意思を持って逸れぬ二つの黒眼。 伏せられなくなった紅色は、しかしただただ静かで揺らぎない。 汲み取れる感情など、覗きたがりにも見つけられなかっただろう。 「鬼の子」を蔑みながら、その手で転がされた村人とは違い 鬼の目線は逸れず、じっと話を聞いてから口を開いた。 ] (390) 2021/06/19(Sat) 1:19:02 |