【人】 “観測者” 処暑[ その影を見つけたのは、何時の事か。 人間よりも小柄な形状が少し覗いているだけなので、暫し“観測”された後だったかもしれない。 相変わらずの会場内の観察時、入口の辺りでふと目が止まった。目線の先には――雪兎。>>349 ] ……………… [ その瞳が“私”を見ているとは判らなかったが、 私は暫くじっと、その姿を見つめた。 愛らしい雪兎……型の魔道具。 本体たる『冬至の灯守り』の彼女が遠隔操作しているらしい端末だ。 当初は雪兎が喋るものだから不思議がっていたが、そういうものなのだろう、と思考を止めた。 変わり者の灯守りだな、と思っていたが、とある冬至の季節。冬至の彼女“本人”を見掛けた。>>319 何時も端末越しに会話していた故か「ちゃんと人型だ……」と、私にしては珍しい驚愕が湧き上がったのは……恐らく、随分と昔の話だ。 そんな彼女に自分から寄って行く気はなければ、此方に呼ぶこともないのだが、 常より食べ物か何かを強請られているならば、今日も差し出そう。 荷物から取り出したのは――処暑の領域で収穫出来る 米 。常に収穫期の田が広がる故に年中収穫することの出来る米は、 品種も謎であるが「よく分からないが美味」だと評される。 私の領域には人を入れず、かと言って収穫も面倒なため、滅多に人にやる事もないのだが、気紛れに他の灯守りにやる事もあったかもしれない。 何の装飾もない紙の袋に一合分。 机に置いて、そのまま手帳に視線を戻した。 ……尤も、そのまま食べられるものでもないから、雪兎は反応しなかったかもしれないが。*] (399) 2022/01/18(Tue) 2:02:23 |