【人】 “観測者” 処暑[ 隣同士故に関わらねばならない機会はそれなりにあり、 『鍵』の受け渡しの際にも話しかけられるのが常だ。 最初は人見知りを発揮し、聞かれても黙ったままのことが多かったが、 流石に数十年も付き合っていれば、関わることに慣れてはきた。 とはいえ、「変わりないです」「ええ、沢山ありました」「先日立秋さんにもらったものは美味しかったです」等、淡々とした答えしか返せないのは変わらない。 それでも彼が会話を続けようとしてくれるのならば、ゆったりながらも会話は続いていただろうが。 苦手、ではない。只やはり、気後れしてしまう。 騒々しさは観察する分には興味深いが、私自身に向けられると一歩引いてしまうのだ。 とはいえ、引きこもりでも必然的に関わる相手であるために、恐らく彼には一番世話になっているし、 年上ということもあって、甘えている部分はある、のだと思う。 このまま、会話するに面白くない存在であっても、騒がしいと少々呆れてしまっても、 彼は私に関わってくれるのだろうなと……そんな類の。 「立秋は今日も陽気だ。笑顔が眩しい程だ」 そんな記述を手帳へと。* ] (443) 2022/01/18(Tue) 15:32:43 |