【人】 U『女教皇』 キュリア--過去回想・売店-- ["証持ちの子供にすら気をかけてあげられる" という世間体とやらのおかげで、 洋館に移動する当日のわたくしには生活に困らない程度の資金とお金を入れるための小さな袋とさらにその袋を肩に掛けて置くための長い紐が付いた蓋付きの袋が与えられておりました。 わたくしは運がいいことにそれらは過去に読んだ物語に登場していたから知っていました。 たしかその資金はエム、お金を入れるための袋はオレット、エムを入れたオレットを入れて肩からかける袋はボケット。 ……正解している気がしません。なぜかしら。 物語の本をもう一度読み返さなければ。 館についてどれくらい経ってからだったかは定かはないのですが、 ある日「初めてのお買い物」に挑戦いたしました。 理由はなんだったかしら? ……ああ、そうだ。ドアに引っ掛けてしまって上着の裾が切れてしまったから繕おうとして、けど上着の色にあう糸がなかったから、それを探しに売店まで行ったのでした。 その時に、なぜか懐かしさと悲しさを思い出して胸がチクリと痛んだのです。 そのおんなのこはわたしと入れ替わりに売店に入って参りました。 すれ違った瞬間に香った草花の香りが何かを呼び起こさせたのか、その後に話す声を聞いて何かを感じたのか。 詳しく説明できる状態ではないくらいに心臓が激しく……バクバク?どきどき?高鳴っておりました。]** (444) 2022/12/15(Thu) 23:45:48 |