【人】 磑風舂雨 バーナード>>507 あなたが捉えた左手越しの顎は見事に打ち上がり、喉奥からは言葉にならない呻き声が漏れて。しかしそれでも拳に届いた手応えに口元は歪んだのだが、それをあなたが視認することはなかっただろう。 「あは」 声にならない二文字を残し、あなたとほぼ同時に仰向けに倒れる。違うのはまだ起き上がれる点と肩を震わせ笑っている点くらいだろうか。床に手をつく形ではあるものの身体を起こし、ぐらつく頭を押さえながらゆらゆらと、そしてゆっくりとあなたのもとへ。 誰の目から見ても声があげられないであろうあなたを跨ぎ、 膝をつきながら 腹の上に座るような形で拘束する。右手だけをあなたの手に重ねて笑う喜色が抑えられていない声はよく弾んでいた。「このままだと最後までやるしかなくなっちゃうなあ? 降参するなら手を握ってね、……10……9……」 あなたにそれが為せないと分かった上での問いかけとカウントダウンは、死へのカウントダウンに等しい。 (510) 2022/02/12(Sat) 19:07:08 |