【人】 1年生 工藤美郷──回想・放っておかない朝霞さん>>339── できる限りのことをしておいた方が、今後に影響が無いと思うのですか。 美術館についたのに、しばらく体調不良で思ったように動けないのは、避けたいです。 [朝霞を真正面から見つめたまま、彼女の言葉を繰り返すように返答した。 工藤は、相手の言葉を鸚鵡返しするように話す癖があった。 それ故に鬱陶しい、馬鹿にしている、と嫌われることも多い。 工藤からしてみれば、一から言葉を組み立てるのが難しいだけなのだが。それを説明する言葉さえ持たぬので、周囲との距離は開くばかり。] こういう時に備えてきて、今が活かす時なのですか。 ……朝霞さんの言うことは、私にはよくわかりません。 [なぜ、何をするかも分からない他人のために備えるのか。 工藤には、彼女の行動は全く理解できないものであったが、じっと朝霞さんを見上げたまま、ぽつりとつぶやいた。 とても小さくても、近くにいた朝霞さんにだけはその言葉が聞こえたはずだ。] (516) 2022/09/03(Sat) 22:43:12 |