【人】 “観測者” 処暑―― 冬至の彼女 ―― [ 「冬至の雪兎端末が会場内を伺っている。何をしているのだろうか? 何を見ているのだろうか?」 手元の手帳にはそんなように記されている。 人より小さい瞳の上に、距離もあるため、見つめ合っている意識は私にはなかった。 彼女が私を“観測”していると知っていたなら、“観測結果”がどうであったかを聞いてみたいとも思ったけれど、 私が視線を外し、動けば、 手帳に目を落とす間に、彼女は飛び跳ねながら素早く此方へと近付いてきた。>>450 ] …………………… [ 器用に机の上に跳び乗る様を、手帳から顔を上げ眺めながら、しかし言葉は発さなかった。>>451 「目玉焼きか?」との問い掛けに何も言葉が出なかったからである。 悪戯めいて肯定することも、本当にそう思うのか?と呆れることも私には出来なかったからだ。 単純に「違います」とはっきり否定することも放棄して、手帳へと視線を戻す。 ……が、跳ねた兎は手帳の上に綺麗に着地し、私は記録用紙を失ってしまった。 ] (535) 2022/01/18(Tue) 23:42:59 |