【人】 “観測者” 処暑―― 月夜、金色の領域にて ―― [ それが当代の私に代わってからは、それは暫く途切れていただろう。 だが、私も見つめられたのだったか、どうだったか、 気紛れに冬至の彼女に“米”を渡すことにした。 ……しかし、いたく感動したらしい彼女が、私の領域までやってくるのは完全に予想外だった。>>452 私の領域には、誰も人を入れないが、灯守りだけは他灯守りの領域に許可なく立ち入ることが出来る。 それは私の“観察”にも大いに役立っており、領域内に風を吹かせては“覗き見”するのが常なのだが。 ……立秋の彼以外に、態々私を訪ねてくる者がいるとは思わなかった。 処暑の領域の時間はあまり外と変わらない。夕方が少し長いぐらいか。 とはいえ、気儘な引きこもり生活、彼女が訪ねてきたその時は、まだ起きていた。 ] ……………………はあ…… ……そうですか……お好きにしてください [ 長い沈黙の後、出たのは溜息ではなく、相槌の言葉。 この時間の訪問に対しては何も言うことはないが、色々と言われてどう反応して良いのか分からなかったというのがある。 彼女は暗闇の中でも収穫をしようとしただろうか。 私は……手伝うことはせず、唯彼女を“観察”していた。 そんな果たして彼女の手によるおむすびをご馳走になれたかどうか。 領域に誰かが居るということ。そんな時間は居心地が悪くはなかった。 ただ……この出来事をどう受け取るべきか分からなくて、彼女には私の反応は淡白に見えていたのかもしれない。 もし彼女がそれからも訪問を続けたならば、私の態度も徐々に軟化していったのかもしれないが。 ** ] (541) 2022/01/18(Tue) 23:52:48 |