【人】 1年生 工藤美郷──回想・小泉先輩の指導>>369~── [自分の言葉が否定になっていることにも気づけない。 小泉先輩が眉を顰めても、人間関係を円滑にするための微笑みも、その表情の変化の意味さえ読み取れない。] はい。私がバイト中に一生懸命パンを並べていたタイミングで、小林先輩にちょっといいかと邪魔されたら、イライラします。 [ただ、思ったことをそのまま口に出す。結果、怒られたり絶縁されたりして、びっくりする。けれど、驚いても顔には出ないから、評判は悪くなるばかり。 工藤は一瞬たりとも逸らすことなく、小泉先輩の目を見つめ続ける。心の底を見透かそうとするように。 「相手の目を見ると、顔に心の声が書いてあるのが分かる」そうだ。工藤は「人の心が分からない」とよく言われる。だから人が離れていくのだと。 だが、いくらじっと小泉先輩の目を見つめても、相変わらず「何も書かれていない」。 だから、工藤には彼の心は読めないまま。] (550) 2022/09/03(Sat) 23:59:00 |