
![]() | 【人】 天乃 時鬼夜吸血人形と檻の在処(きゅうけつにんぎょうとおりのありか) 雨に濡れた旧都の地下で、泥棒の彼は、人見知りの科学者と出会う。 彼女は目を合わせず、震える声で言った。「目的は同じでも、私は足手まといです」故に、二人は別行動を選ぶ。 廃棄された博物館の展示室。床一面に乾いた赤黒い染みが蜘蛛の巣のように広がり、染みの中心で古い人形が立ち上がる。針の指先から、血の糸が伸びた。人の血臭を嗅ぎ分ける捕食者の目覚め。 博物館の奥深くに隠された古代技術の秘宝、それを守る 吸血人形。狙われる科学者。 科学者を囮に秘宝を探す泥棒。しかし、博物館を探索した末に 見つけたのは一体の自動機械であった。自動機械との 語らいの末彼らは知る。 吸血人形の内部にこそ秘宝はあるのだと。 吸血人形を捕らえるため、即席の檻を作り、待ち構える二人。 科学者の血の匂いに惹かれ、人形と死が迫る。 檻が作動、見事に人形を捕らえた・・・かに見えた。 しかしそれは吸血人形の罠だった。蜘蛛の様な技を持つ人形は 罠を仕掛けることにおいて一日の長があったのだ。 科学者は檻ごと蜘蛛の巣に捕らわれてしまう。 絶望に歪む科学者の顔、泥棒は自動機械の力を借りて 瞬時に科学者と自らを入れ替える。 突き刺さる吸血人形の毒牙、吸われる泥棒の血…。 しかし、それこそが泥棒の張った真の罠だった。 サイボーグである自らに流れる油を吸わせ、吸血人形の 動作を狂わせる。 奇しくも抱き合ったまま固まる二人。 科学者と自動人形が救助に駆け寄ろうとする。自らの張った蜘蛛の檻の中心で、自らが吸ったサイボーグの血に囚われた吸血人形の哀れな最期だった。 (721) 2025/09/14(Sun) 23:51:30 |