>>755 #雪の山荘編

わたしの名はメアリーアン、略してメリーさん。
悩みはすぐ「『今あなたの後ろにいるの』って言ってみて！」とせがまれること。ちなみに羊は飼ってないわ。

オーナーが大事にしていた枕が謎に消失したり、限界を感じたらしい登山家が行方不明になった後謎にすぐ戻ってきたり、謎に物を隠すらしいカップルの幽霊が出たり、わたしの元カレと今付き合ってる資産家の女が謎に大泣きしていたりしているけどそんなことはどうでもいいの。

わたしが気になるのは、30代OLにしか見えない自称推理作家──上野彩のことよ。

第一印象から彼女は衝撃的だった。
に、忘れられるわけないわ。しかもこの雪山をで越えてきたなんて信じられない。無難なで取り繕おうとしていたみたいだけど、わたしは騙されないわ。この恰好で人前に出られる鋼のメンタル。只者じゃない、そう思った。

をつけたサモエドをお散歩させている上野彩と立ち話をしたときも、彼女は少し様子がおかしかった。
になんて薄着をしておきながら「今朝も寒いですね」って。高機能ダウンを持ってきたのなら着ればいいのに！

帰ろうとしても何故か引き止められての良さを熱弁されたけれど、ガタガタ震えながら話し続ける彼女に鬼気迫るものを感じて、まったく頭に入ってこなかった。
作家はこだわりが強い……言い換えると変人が多いというのは偏見ではなく本当なのかしら。