
![]() | 【人】 うさぎのミミとジョイフル 上野彩>>849続き #雪の山荘編 暇つぶしもかねて、わたしは上野彩の後をこっそりつけてみることにした。探偵の真似事なんて柄じゃない。でも、直感が彼女から目を離してはいけないと囁く。持ってきたはずのダウンを着れなかった理由、長話でわたしを引き留めた理由、解き明かしたい謎が多すぎる。 紅紫系の牛柄のボタンダウンシャツ 赤紫のカバーの枕 そばがら ふと、喉元に柔らかいものが触れる。見下ろすと、それは 青のストール 「メリーさん、寒くないですか? これ、使ってください」 背後から上野彩の声が聞こえた。わたしは彼女を追っていたはずなのに、いつの間に回り込まれたのだろう。『今あなたの後ろにいるの』はわたしの台詞でしょう? ありがとう、でも遠慮しておくわ。そう言おうとしたが、言葉にすることはできなかった。息が詰まり、足が浮く。 霞んでいく視界の端に、上野彩がいつも手放さないウサギの人形が映った。ああ、これはきっと 形代 そこでわたしの意識は途切れた。 やっぱり名探偵になんてなるものじゃないわ。 🐰<という小説を一か月缶詰して書きあげた、ということにしておけば今日も世界は平和なのだ。 (851) 2024/11/30(Sat) 0:26:25 |