>>851　#宇宙旅行編

宇宙旅行を終えて地球に帰ってきたわたしは……崖の上で風に吹かれていた。
足元は不安定で、ヒールのあるを履いてきたことを少しだけ後悔する。
でも、あの旅で手に入れたものを今日は身に着けていたかったから。

目の前に立っているのは、手を繋いで一緒に帰還したあの人。

────そう、松坂さんだ。

わたしはに、、という高校生時代とさして変わらない恰好をしていた。おしゃれをする気分には到底なれなかった。

「わかっちゃいました。犯人は……あなただったんですね」

わたしの言葉を聞いて、松坂さんは少し微笑んだ。
彼の目を見る勇気は出ず、わたしはその口元を見つめながら淡々と推理を披露した。

潔癖症の松坂さんは、前の彼女を撲殺していた。凶器はだ。
動機はおそらく、松坂さんのお気に入りのを彼女が勝手に着てしまったこと。
宇宙ホテルでを使った密室トリックを作り上げ、緊急ブザーが鳴り響いた混乱に乗じて証拠を回収。
ウェルカムドリンクのに薬品を仕込んで、わたしの記憶の時系列を混乱させ、わたしと二人でいたことにしてアリバイを用意した……完璧な犯行だった。

ただ、ひとつだけ。
ブラックライトで”見えてはいけない痕跡”が浮かび上がってしまうをうっかり落としてしまい、わたしに拾われたことが、松坂さんの唯一にして最大の失敗だったのだ。