【秘】 傷弓之鳥 マユミ → 甚六 カナイ「鹿乃」 次に貴方を呼ぶ声は、いつも通りを取り戻していて。けれどまだ少しだけ弱々しさを滲ませているのか、僅かに口籠もったまま。 「拙は、皆がいるところに行きたいと思っていました」 「でも」 「それで本当に満足できるのか、分からなくなってしまって」 ぎゅう。痛くない程度に、けれどしっかり腕に力を込める。どれだけ冷えていても平気だ。貴方が貴方である限り、心に届く声の温もりそのものは変わらないままなのだから。 「今、拙は迷っています。死ぬべきか生きるべきか、めいっぱい考えて悩んでいるところです」 この後、死んでいるかも分からないまま失踪した青年を見て考えの方向性がある程度まとまるのだが……それは、今はまだ知る由もない事柄だ。 「鹿乃は、拙が鹿乃と同じになったら嬉しいですか?」 (-9) 2022/07/15(Fri) 15:53:49 |