人狼物語 三日月国

246 幾星霜のメモワール


【秘】 白昼夢 ファリエ → 寡黙 エミール

>>-13

「そうですか……」

聖女の事をどう思っているか。
痣を持つ者達はそれぞれに想いを抱えているだろう。
帰りたいと願う心と同じように、帰らないでと願う心もある。

それをあなたが知っているのかは分からないけれど。
帰れなくなった転生者は少なからず彼女を疎んでいるのではないだろうか、と。
己の経験に基づいて思ってしまったものだから、あなたが抱える元の気持ちがどうであるかに掛かっていた。
それはあなたの答えとして聞けるだろう。

「あなたが天秤にかけられなかったのはその二つだったんですね。
 こういう時優しいって言うんでしょうか?
 だってエミールの両親は代わりが居ないでしょう。
 孤児院の
子供達
はそうじゃない。
 一緒に遊んだあなたならよく知っているように、みんな何処にでもいる普通の人間ですよ」

そこには女自身も含まれていた。
しかし、ファリエにとっては数少ない知人であり、この祭りに際して関わった時間が無為だったと言いたいのではない。
単純な勘定。どちらがより特別かという、簡単な計算。
展示物には触れてはならないのと同じ。だから手を後ろに回して客観的に述べる。

「だから……だから、もったいぶらないで言っちゃってください。
 あなたが何を手に入れて何を手放そうと恨んだりしませんから」
行かないで、なんて。特別でもないのに口にできない。
(-18) 2024/02/18(Sun) 10:05:47