【秘】 ハチヤ → エン[棚に触れた瞬間に、記憶を見せ続けたハチヤが大事にしていたものの、ある男の形見でもあるものの、 最後の魔術が動き出し、ある情景を写すだろう] [明ける明ける夜の闇、わずかに白んだ山向こうを睨み付け、 男は棚を背にしたまま、大きく大きく息を吐く。 何度も再生しては切り落とされ、歪な形になってしまった右脚と、槍か杭かはわからないが、棒状の金属で床に縫い止められた左脚と左肩を見れば、 男が棚の方を向かないのではなく向けないのだということはわかるだろう] ──あー…、くそ、しくった。 最後に声ぐらい聞きたかったな。 なんで、眠らせたんだ俺。 ハチヤ、なあ、お前さ……わかってなかっただろ。 わかってなかったよなぁ ……はぁ、あー、愛だの恋だのきっちり教えてから、 あらためて惚れさすつもりだったのになぁ。 ハチヤ、実は起きてたり…………しないよなぁ ごめんなハチヤ。 ずっと傍にいる、鱗をなんとかしてやる、外に出してやる…… 一個しか守れないわ。ごめんな、本当にごめん。 ……………… [夜明けのときが近づいて、それでも男は動けない。 男は己の天敵を、それのひとつが太陽であると正しく理解しているのから] (-24) 2021/04/08(Thu) 23:37:54 |