【独】 遊蕩 ディルク街から足を遠のけて、森の中。 いつものようにキャンディを口に含み、 ころころと音を鳴らし転がして。 自由に飛ぶ蟲達を眺め溜息吐き出す。 「……未練、はないんだよね」 どちらの世界にも。 男の帰りたい理由は些細で、誰よりもきっと小さい。 ここにいたい理由もまた、同じ些細かもしれないが。 「生きるって難しいや」 のらりくらりと風任せのように生きてきた罰だろうか。 兄を追うことを止め、楽に生きてきた罰だろうか。 何にしても、選択の権利を得るべきは己ではなかった。 もしも、彼ら痣持ち皆がそうであるとするのなら。 (-32) 2024/02/18(Sun) 22:40:47 |