![]() | 【秘】 ただいま 御山洗 → 宵闇>>-37 「いいんだ。隠してたんだから、知られてないならそれでよかった。 今だって困らせてるのは俺で、翔が悪いことじゃないんだから」 遠巻きにする手、遠巻きにする言葉。泣いて萎れた頭はなんだか遠い風景のように隣を見ている。 見納めるように横顔を見つめて、視線が輪郭を滑っていく。 いつかも、この夏も。ずっと見つめていたもの。風景の中にある彼を見ていたのだ。 年甲斐なくはしゃいでる姿も、バーベーキューにかぶりつく様子も、 日の傾き始める空と海の間にある姿も、等身大の彼を。 「……ありがとうな。連れてきてくれて」 きっとこれで最後になるのだろう、それを視界に収めてられるのも。 きゅうと指先を皮膚の固くなった手が握る。 握りしめているのに、身動ぎしただけでするりと落ちそうなくらい脆い。 (-38) 2021/08/20(Fri) 16:45:18 |