![]() | 【秘】 宵闇 → ただいま 御山洗「俺は、アキラのことは好きだ──友人としてな。 お前が手を取ってくれると安心するんだ。 好きだと言われて、嬉しかったよ」 これはいつもの軽口ではない、嘘偽りのない言葉だ。 「俺とお前の好きが違うことは百も承知で言うが だからって……このまま手放したくもない。 傲慢だと思うかい、俺はいつも満たされない気分で一杯だ」 想いが両立しないときはどうしたらいいなんて、ひとつだ。 「なら俺が、考えを変えよう。変えたい、そう思った」 いつまでも同じ考えに囚われる必要を捨てる。 それに、やっぱりお前が悪いとは少しも思わないからだ。 そう思わせてしまうほど、きっと心に灯がともってしまった。 これで最後なんて、やっぱり寝覚めが悪いんだ。 どう思われようが構わない、きっと、後悔はしないだろう。 思い出は思い出のままだ。壊れはしない。 あの時楽しかった日々のままだ。 誰がどんな気持ちを抱いても、そうだ。 一歩、また一歩と近づく。目の前までやってくる。 御山洗の胸倉をつかんでぐいと引き寄せる、二つの影が重なる。 → (-40) 2021/08/20(Fri) 19:59:25 |