【秘】 『巫覡』 ロベリア → 蒐集家 テンガン演目の途中、舞台から下りて観客席へと。 眠りを誘うような心地のいい音楽とともに踊る演者達。 それをボクはそこから見ていた。 強く感じたのは恐怖の味だ。他にも混ざる何かがあった。 こちらまで具合の悪くなるような苦味の強い痛む味。 ゆったりとしたワルツが流れ、演者の笑い声が耳に響く。 柔らかな陽だまりを思うその音に自然と笑みが浮かぶ。 自分の死さえ酷く怖く、痛いものだと感じるのに。 …これは駄目だ、良くない。早く死にたい。感じたくないものだ。 次はロンド。目を閉じて音に集中する。 弾むようなその音は楽しげな気分を感じさせる。 目を閉じても、耳を塞いでも感じるものは変わらない。 むしろより鋭く感じた恐怖の味はこちらの感覚まで狂わせる。 次 は、あ ぁ ア、ア゛ ……………。も う や め て く れ ! ! ! こんな味を、 ……………ボクは、知りたくない。 ロベリアが目を覚ます時。 君や魚を待つ機械に聞こえたとするなら声にならぬ声。 叫びというには無茶苦茶で気でも狂ったような。 その後は気の所為だったかのように静かになるのだが……。 果たして、君はこちらへ足を向けるだろうか。 (-45) 2022/03/08(Tue) 3:05:04 |