【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ>>-52 「俺はこの世界で生きると決めたからな」 「だから願いも考えた」 本気だから、そんなに困らなくて良いという意味を込めて言う。 「ひとつめは……俺とファリエに守護の加護を」 それは万能のものではないだろう。 それでも、この世界での旅には危険が伴うことを俺は知っている。 自分の力で守り切るのは前提だけれど、加護があれば安心というものだ。 まぁもしかしたら、痣が光ったファリエには必要ないのかもしれないが、そこはそれ。 「ふたつめは……」 「俺みたいにここに連れてこられて、帰れなくなった人たちに。 前の世界の事を忘れてしまいたいやつがいたなら、忘れさせてやってくれ」 帰れないなら、未練を残していてはうまくこの世界に順応できない。 絶対に忘れたくない人もいるだろうから、希望制だ。 「俺は……心のアルバムに仕舞っておくことにする」 それは思い出そうとしなければ考えもしないもののように。 ふっと、時々懐かしむくらいで丁度いいと、そう思えたのだ。 (-53) 2024/02/19(Mon) 14:37:29 |