人狼物語 三日月国

224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】


【独】 リヴィオ

爪のない右手が、床を掻く。
白に滲む赤はやがて床を汚し、線を残す。

それでもまだ、目を覚まさない。覚ませない。
起き方を忘れてしまったかのように、
夢の中に囚われている。囚われ続けている。

しかし、男にとって幸福だと言えるのは、
この場に、男に手を伸ばすものがいないことだった。

そのはず、だった。

誰かに迷惑心配はかけたくないんだ。
…俺なんかの為に、その心を割いて欲しくない。
やっぱり心は簡単に変えられない。変えられるはずがない。

だけど。


「   」

誰かに求めた救いが、音にならずに消えていく。
それでもこれはきっと、確かに救いを求める"声"で。
…もう一度、指先が床を掻く。
零れる吐息は、苦痛の入り混じるものだ。

きっと、そんな自分を表に出すのは今回限りで。
誰にも見せたくない見せられないリヴィオひとりの人間の姿だった。

…夢を見る。この悪夢から抜け出すにはきっと。
自分自身ひとりの力では、到底難しい話だった。
(-63) sinorit 2023/09/28(Thu) 3:14:20