【独】 摘まれた花 ダニエラ果てなどないと思えるほど長い長い尋問の時間が、終わり。 ようやく牢獄に戻された女は、著しく消耗していた。 殴打の痕目立つ腫れた頬。 きっと衣服の下、見えない部分にもいくらもの痕がある。 外れた肩も治療こそされたもののまだ鈍く痛んだ。 ただ横たわることすら苦痛の中、女の頭の中はひとつのことでいっぱいだ。 それでも、考えないようにしているつもりだったのに。 大切な、ふたりの約束の証。 「……ぅ…」 熱くなった目頭から零れるものを堪えようとしたがそう上手くはいかなかった。 ひとつふたつと目尻から流れ落ちて髪を濡らす。 だけど我が身可愛さにただ黙っていることだけはできなかった。 こんな腐った法案なんかさっさと壊れてしまえ。 …あの様子では、その一助にすらなれたかすら怪しいものだ。 しかしその尋問のさなかだったこともあり、法案の出資者とされる人物の正体を今の女が知らないことは、不幸中の幸いといえた。 もうひとつ幸いがあるとするなら、 1番守りたい情報たちだけは守り抜くことができたことだ。 あとは多少騒々しさのある署内の様子に、 『祭り』の成功を感じとることができたなら、それも。 それにしたってやっぱり気分は最悪で、 その中でも見つけられる小さな安心に縋っているだけだ。こんなのは。 (-100) 2023/09/28(Thu) 18:20:54 |