人狼物語 三日月国

224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】


【独】 歌い続ける カンターミネ

>>-104
「おぁぇ」

そんな間抜けな声が出たのは『努力』を見たからで。
変装の意味がなくなる、慌てて抱きとめるような格好に。
流れる涙にこれまた慌てて、偽造書類を取り落とし、
茶髪のウィッグを揺らしながら辺りを窺う。

「あ、え、エリー、ごめんて、遅れたのは謝るって。巡回ルートの把握と監視カメラの細工に手間取ったの。でもほら、来たから。ちゃんと来たろ?な?後もう車で外出るだけでこの場はクリアだから、な?安心してくれって。あ、あれか!?い、痛かったか!?」

慌てたおかげで勘違いも甚だしく、息つく間もなく
口を動かしながらわたわたと身振り手振り。
それでもなんとか痛くないだろう場所を探し触れ、寄って。

「……え、えっとな、後はもう、偽造書類とかあるし、
 このまま護送車で脱出するだけだから。
 運転手も用意してあるから、手当はそこで――」

ふと、目についた。約束の証がない指。
触れれば当然痛いだろうから、そこには触れないように。
そっと手を取って、ほんの僅か唇を落とす。

「――今はこれで我慢して。生えたらまた、塗らせてよ」

そうして、瞳を目前に。指先で慎重に涙を拭う。
これ以上余計に傷つけないように。
酷な事に、まだやる事は残っている。
まだ止まれない。まだ終わってない。まだ、まだだ。
でも、この一瞬だけでも、安堵を抱かせてやってほしい。
それが、多分俺が任された事だ。あの男から。
(-109) 2023/09/28(Thu) 20:45:29