【独】 閻魔参[閻魔参 1d>2d] 閻魔参がその女に魅入られたのは、丁度、日が天頂を過ぎる頃。 天より下された告げ事に従って人々を結び終え、ねぐらに帰ろうとしたそのとき、不意に視界を、大輪の紅い花が埋め尽くした。 (──!) 昼日中のこと、怪異など現れないだろうと気を緩めていたのは確かだ。 だがそれでも神域を出たばかり…手順に則って身を清め、天の意思を伝える務めを果たしたばかりの魂に、『それ』は一瞬で浸透し、浸食した。 「…っ、ァ…」 覚えず呻きが漏れる。 その視線の先、常日頃両目を覆う晒し布を今は外して、小柄な銀髪の女が艶然と笑んだ。 紅い瞳から目が離せずに、閻魔参は立ち竦む。 ──こちらに来るのじゃ、閻魔参 妖花、サリエーラが密やかな声で呼び掛ける。 微動だにできず閻魔参は、開いたままの口で浅い息を繰り返した。 (-114) 2022/07/26(Tue) 22:41:01 |