【独】 閻魔参*** 意識と身体の変化に辛うじて馴染むのに、およそ一日を要した。 永らく空でも支障のなかった精神は、今やその大半をサリエーラに占められていて、寝ても覚めても彼女のことしか浮かばない。ひとたび想えばこの上ない幸福感と、同時にかたちの定かでない不安が押し寄せて、自分は彼女の下僕たるに足りているのか、と絶え間なく自分に問うた。 水晶振子を探せと言われれば、彼女に代わって自分の身を衆目に晒し、天から下された告げ事すらも歪めた。役に立たねば、と必死になった。 だが結果は、決して芳しくはなく。 「…なるようになるしかねえか」 一昼夜を経て理解している。この想いは片恋に過ぎない。閻魔参にとって彼女がどんなに愛おしくとも、大切でも、慕わしくとも、彼女が閻魔参をどれほど重んじてくれているかは、推測することすら叶わない。 生き残るための手駒として引き入れたのなら、自分はあまりにも役立たずだろう。思いつく限りを捧げても、彼女の望みに届かないのだから。 (-118) 2022/07/26(Tue) 22:43:59 |