【独】 Ninna nanna ビアンカ>>-142 ――――― AM06:29 ――――― 男はたんたんと、私の店の娼婦をひとりさらう命令を下していた。 そんな男のものを、私はまるで恋人のそれであるかのように口で慰めている。 「……もうすぐもうひとりくる。 そうしたら、逃がしてやるよ」 リーダー格の男が電話をきるなり、私を見下ろして口をゆがめた。 もうひとり来たら、そのまま殺されるのだろう。 目許だけにあいまいな笑顔を浮かべて返しながら、ぐちゅ、と唾液の音を響かせる。 「もうそろそろ朝じゃねえか。 まあ、俺も一発――」 男の中で、私はもう死体に見えているのだろう。 殺すことが決まって、注意をはらうこともなくどう扱ってもいい道具だ。 奉仕を続ける私の肩を掴んで引きはがし、硬くて痛い車内に転がして覆いかぶさってきて。 (-143) 2022/08/29(Mon) 18:52:33 |