【秘】 療育 クレイシ → 遊惰 ロク「──、」 絶句する。 声さえ聞こえぬこの現状。逃げてくる者が出ている程のこの環境。 手を引くよりも、自らがくたばる可能性の方が大いにある。 「……お前は、俺に、死ねって言ってるのか……?」 地を這う低い声が溢れて進む。 掴んだ藁は、釣針は、それはそれは極めて不安定。 「──もういい。聞こうと思った俺が馬鹿だった」 そう吐き捨てて、今度こそ奇術師に背を向けて去るだろう。ふらふら、ふらふら、まるで逃げ出すかのように。 激流に呑まれ揉まれて溺れて沈む。 脳裏に響く奇術師の声に苛まれ、もう真っ直ぐ歩くのも困難だ。 かき乱された心を押さえつけるように空いた片手で胸を押さえながら男は進む。 とある日のことだった。蛙が流されるまで──あともう少し。 (-183) 2021/07/11(Sun) 15:52:49 |