![]() | 【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ手を掴み、摘むのはその存在を確かめるため。 確かにここにいるのだと、 夢ではないのだと、感じたかったからだ。 「そうか。…うん、なら……良かった」 後輩の話を聞けば安堵の息を吐き出して、 まずはダニエラ、そしてニーノ。アリーチェと。 次から次に後輩の姿を思い浮かべ、そして、 名前のあがらなかった一人も、ほんの一瞬思い浮かべた。 恨むことはないだろう。ただ、思う所があるだけで。 しかし、それに浸るのはもう少し後。 君は先程ゆっくりは寝れないと言っていたから、 話が一段落つけば移動のため身を起こさなくてはならない。 「…いや、"赤子"の頃の記憶ってやつかな。 俺は案外、記憶力が悪い方ではなくてね。 まぁ、なんだ。……覚えているから、繰り返し見るんだ」 「あぁ、行方は知らないし訴えようとは思わない。 街の宝ってやつはそれなりに寛大なんだ」 わざとらしい言い方は逆に男の心を落ち着ける。 髪を乱され、こめかみの近くを押されても苛立つ心はない。 ただ友人とじゃれ合い、笑っているだけだ。 夢の残像は消えないが、それでも、顔色はずっとマシで。 (-223) 2023/09/29(Fri) 21:02:57 |