【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 >>-418 「忘れ物、ですよおー!」 「…あげたものくらい、大事にしてくださいよお」 「……ほんとおに」 それは大きく放物線を描いて。 ぽちゃん、と。波の間に落ちて見えなくなった。 …まったく。最後の最後まで、結局文句を言わせるんだ。あの人は。 そういう人だった。知っていた。 それでも、本当に、大好きな人だっただけ。 何も見えなくなった昏い海を見守る。 へたり、と女はその場に座り込んだ。 いつの間にかその頬に、また涙が伝う。 暫くの間そうやって、いつかみたいに、その空と海を見つめていた。 (-419) 2023/10/01(Sun) 20:14:35 |