【見】 くるみ割り人形 トラヴィス>>6 キエ 対価を差し出し、契約によって繋がれたこの関係は 不確かなものよりも安心が出来た。 「───あ、 待って。」 離れていく貴方を求めて、更に手を伸ばす。 「……頼みたい事があるんだ。 私の記憶を食んでは貰えないだろうか? 」その言葉は、離れていく貴方を引き止める事が叶うだろうか。 「既に無い四年分を除いて…… W産まれてから、私が舞台に上がるまでの全てW──十数年分のそれだけ。」 提示するのは、 きっと両親に愛され、豊かな日々を過ごした幼少期の、 悪夢とは程遠い記憶。 「残りは……少し考えた後に。 君の好みの味では無いかもしれないけど、 私から、余分なものを間引いて貰えないだろうか?」 それ以降の記憶──悪夢を除いた『残り』についてはまた後で。 そっと自らの唇に人差し指を付け、貴方を見上げる。 (@3) 2021/10/24(Sun) 16:14:20 |