【見】 天狼の子 夜長>>8 百千鳥 【祭りの終わり】 こっくり、頷いた。 「さみしいのは、俺も」 「この夢にいた人、みんなみんなで、こうして一緒に集まるという のは、とても難しかったと思う。夢でもなければ、本当に。 特に俺は、ほとんどが話に聞いただけの人たちで」 「……ああ、モモチには今言っておきたいな。 最初は俺も分かっていなかったが、 俺は父さんでなく晴くんなんだ」 雪子と和臣の息子の、小学2年生の晴臣。そう説明される。 「晴臣」と直接言えないので、少しややこしかったかもしれない。 「俺は、本当はここに来たことがない」 夢から覚めたら、会いにいける人には直接会いに行きたいから。だからその時にか、もしくは雪子さん伝手に、この夢にいたのは和臣でなく晴臣だと伝えるつもりだった。 けれど夜長は、百千鳥に対してはなんだか大人の皮を被っていたくなかった。いやそれよりも、晴臣として今話したかったが正しいだろう。 夜長本人も、それは自分の中で形になってはいないが。 「家族揃って来るのが一番だったと思うが、そうはなって いなくて。家族の中で誰かひとりだけというのなら、 俺でなく雪子さんがいた方が良かっただろう」 「でも、俺がここに来たことを、母さんは喜んでくれる」 (@3) 2021/08/17(Tue) 20:46:23 |