【見】 天狼の子 夜長>>124 鬼走 思いの外びっくりしたらしい。肩が跳ねた。 「雅也さん」 迷子のよう、という印象はあながち間違いではなかった。普段の彼からすれば、ずっと不安げにあなたの名前が呼ばれる。 一人か。置いていかれたか。こくり、こくり、ゆっくり続けて頷いて。それからもうひとつ頷いた。何事もなければ、本当に虫捕りをしているかもしれない。 実際、今この場に雪子が居たら、一通りの挨拶の後に全員を巻き込んで虫取り大会が行われていてもおかしくない。雪子は都会への憧れが強かったが、ここでのこともめいっぱいたのしむような女の子だった。 「もしかしたら、結構そういうところにいるのかもしれない。 そういう、ここだけの場所。 ……晴くん達を置いて、一人で帰ってくるくらいだから」 (@5) 2021/08/10(Tue) 11:01:08 |