【見】 療育 クレイシ「……ッチサ!どこだ!返事をしろ、チサ!」 川の近くまで来てしまった。土砂崩れが起きていたところも見てしまった。 ここまで来ても見つからないのなら、もう子供は手遅れじゃないか? 弱い心が言い訳をし始める。 大人だから子供は絶対に守らなければならないのか?じゃあ大人は誰が守ってくれるんだ? 大人が子供を守る為に死んでしまったら、いったい誰が責任を取ってくれるんだ? 死んだところで貰えるものなんて仏壇の前で吐き捨てられる「頑張ったね」なんて生温い言葉くらいだろう。 俺はそんなもの欲しくない、俺は自分の身を守りたいだけなのに! 「……ぁ、う?」 瞼もまともに開けられない嵐の中で、ようやく草木や土以外のものを目の当たりにする。 ──黒い塊。赤い何か。 「……ぁ、ね、猫?チサの靴?」 男はひゅっと息を呑み後退りしようとし──足を滑らせた。 ▼ (@7) 2021/07/11(Sun) 18:05:33 |