【赤】 靖国 冬莉………ぁ……… っ、 [深く押し込まれる指先に肩を震わせて目元を隠す腕のその先がきゅうと力を込めて握り締め、悦を逃さんと足が 僅かに内に寄ってしまいながら。>>*4 彼の手から解放された自身は 先端が下腹に付いてしまうほどに存在を主張していた。] ……… こんな姿、……見せて [他ならない彼の 柔らかな強請りを断る心算は無い。無いのだが、数舜躊躇するのは 自分の見栄からだろう。否、それだけでは無かった。———頭に過ったのは この腕を退かしたその先の彼の表情が曇っていく様。] …………幻滅、しないでくれ。 [乱れた呼気のままで、小さく呟いた希う声はこれまでに抱いていた感傷をも含めたものだった。 自身と、彼が言葉にする自身の姿との 隔たり。彼が情を向けてくれるからだろう、その美化された自身の像は嬉しくないわけではない。だが、この浅ましい様を見せて、幻滅したりされないだろうか。視界が晴れたその先も、変わらず隣に居場所を構えてくれるのだろうか。 触れる指先のままに、緩やかに腕を退かしていく。人工灯の光が真っ直ぐに、退かした先から差し込んできて 思わずきゅうと目を閉ざした。火照った頬のままで慣らすようにしぱりと目を瞬かせ、徐々にピントが合わさり ぼやけた像が輪郭を帯びて形作っていく。彼の表情が僅かに鋭く、熱を帯びているように見えるのは 、自身の期待故だろうか。 せめて、会社で向けられる あの凍えた眼差しでなければいい。 ] (*6) 2024/05/03(Fri) 19:49:58 |