【赤】 白衣の アルレシャ>>*7 >>*8 「気に入っていただけたようでなによりだよ。なにせ、私も雇われだし。 パフォーマーとして一定の成果は挙げていかねばね。笑えぬ道化師はお払い箱さ。 副船長は……きっととっても大事にされるのではないかな? 自分から求めるようになるかもね」 空しいように言いながらもやはり表情は喜色に溢れていた。 華美なコロンビーナマスクに隠れた目元は夢見るようにほほえみ、うっとりと細められている。 これはまず第一歩。彼の心体を掌握すること。 そして、まだ慣れぬ客をも当事者にし、快楽を愉しむことに慣れを生じさせること。 もっと大胆な、或いは直接的で規律正しいショウでも、平然と飲み込めてしまえるように。 「自分自身――勘違いや聞き間違いなら申し訳ないのだけど。 それは、『エンヴィー』? 貴方を使って、ということ? それなら、ええ、もちろん。『スロウス』は……そういうのは参加しないほうかな?」 かつりとヒールが床を叩いた。すらりと伸びた足は『エンヴィー』のほうへ向かう。 けれども押し入ってしまいきらずに、いじらしさを演出するように身を捩って。 それからちらり、『スロウス』のほうも輪に加えるように流し見る。 (*9) 2021/07/01(Thu) 23:11:32 |