【赤】 一匹狼 “楓”[そうして昼過ぎ。これから太陽が傾いていくのだろう、けれどまだ夕暮れまで間がある頃合いになって、彼女の呟きがあった。>>*11 ずっとここにいること。 旅に出ること。 そのどちらも彼女の望みなのだろうか。 もし『一緒』を望んでくれるなら── 昨夜巡らせた思いが浮かぶ>>2:*33] 行くか? 一緒に。狼の国探しの旅。 [戯れのつもりで問い返し、彼女の様子を窺った。 今すぐここから旅立つのはあまりにも現実味が無かったが……。今二人で過ごしている時間が本当に夢なら、目覚めた後に彼女の元へ向かってみようか──時が過ぎる間に、そういう考えが楓の中に芽生えていた。 “狼の国”は言うなれば、椿と共に過ごしたあの遊戯の中で楓が作ろうとしたものだった。それが現実に作り得るものなのかどうか、探し求めてみるのも一興だろう。見つかっても見つからなくても、変わらないつもりの暮らしの中で罪を塗り重ねるより楽しい気がしていた]** (*14) 2023/03/09(Thu) 18:56:22 |