【赤】 “観測者” 処暑[ 半ば強制的に関わりが深くなった立秋の彼はともかく、私は他の灯守りに対してなかなか心を開けなかったし、会合へ出るのも、暫く間が空いた。 私は“外”へ出られずに、殆ど領域に引きこもり、淡々と業務をこなしていたけれど、 ただ、“外”のことは、“風”によって“見て”いた。 処暑の灯守りに受け継がれる能力『風星』。 空から地上を見つめる星のように、風によって離れたものを観測出来る能力。 ただ、私は処暑域を見れば見るほど、分からなくなってしまっていた。 この人々に守る価値があるのだろうか、と、そういうことを考えてしまう。 彼から託された位。きちんと継がなければいけない、という思いはあったけれど。 それでもやはり、彼を失った世界に、意味を見出す事が出来なかった。 ――私は、この世界を嫌いになってしまっていた。 “風”を小雪の彼女の元に飛ばしたのは、ほんの気紛れだ。 彼が尊敬していた彼女の仕事を“見れ”ば、もしかしたら民を治めるとはどういうことか、分かるのではないかと。 ……さて。それが始まりであった。 灯守りという存在を“観測”するのは興味深く、元の学者気質は蘇り、熱心な趣味となってしまった。 ] (*19) 2022/01/23(Sun) 4:47:44 |