【赤】 片連理 “椿”[あたたかい茶を一口だけ飲んでから、カップを持って二階のホールへ向かう。ここのソファは一階のよりも柔らかくて座り心地が良い。 銀の弾丸について考える。 椿は楓とは多少出自が違うから、性質も大きく異なっている。彼女にとって、銀の弾丸、というのはものの例え以上のものではなく、触れても全く平気ではあるのだが、その代わり、当たり前に、銀であろうが鉛であろうが、撃たれれば死ぬ。 弾丸を打ち込まれるのはどんな感じだろう。あるいは、牙に貫かれるのは。 今まで自分がしてきた所業が、この身に返ってくるのを想像すると、なんとも言い難い感情に襲われる。 激しい拒否と、当然の諦観と、胸がすくような清々しさと、それらが全てひとつになったような。微かな不快を押し流すように、まだ熱い紅茶をひと息に飲んだ。] (*23) 2023/03/05(Sun) 21:26:16 |