【赤】 灯守り 小満[しかして蛍でもない灯守りの弟子、というものは、さしたる仕事がない。 あの小満は本当に正しく仕事のできる灯守りだったので、蚕起桑食の支えもあって仕事はすらすらと片付いていったし、私は文字通りの意味での見学ばかり。 紅花栄に屋敷のことを教わったり、茶や料理を教わったりしたほうがよくよく身についている。 あとは麦秋至と領域の花畑で昼寝をしたり、笛を吹いて過ごしたり。そもそも直す気があったのか知らないが、浮雲のような私の性格が正されることはついぞなかった。 そんな折、とにかくいるだけでもいいから見て行けと、私はこの会合の場に連れてこられた。 蛍の席を勧められたが断った。そこは私が座していい場所ではないからと、無駄な頑固ぶりを発揮して円卓の少し後ろで突っ立っていたっけ。 そうして本当に何もせずいたから――うん、やはり不安はなかったな。 なにせ責任など何一つなかったんだから。] (*28) 2022/01/21(Fri) 21:15:43 |