【赤】 “小雪” 篠花ーー回想:お祭りーー [昔々の話。私が灯守りとなってそれなりの年月が経った頃。 街へ視察へ出ていた時に、女性の悲鳴が聞こえた。 現場へ向かうと、どうやらスリに合ったらしい。 幸い、犯人は捕まり、盗ったものは返却済みではあったが、犯人は反省するふりすら見せなかった。 それどころか、盗られる奴が悪いと吐かした。 その態度に、さすがの私も怒った。 普段は自分の灯りの器にしている氷を溶かさないようにしたり、食材の鮮度を保たせたり、大切なものを保管するために使っている能力を、初めて人へと使ったの。 男衆たちに頼み、適当な空き家の、何もない部屋に放り込ませた。 そこで一人、反省なさいな。 反省したら出してあげるわ。 時間の流れさえ干渉しない、何もない空間。 そこへ閉じ込め、周囲に食事も水も不要。近付くな。と命じると、そのまま領域へと帰った。 次の日ーー私達の時間では1日だけれど、スリの時間ではどのぐらいの時間かしらね。 扉を開けてみると、憔悴したスリが地に頭を付け、泣きながら許しを請うてきた。 そんな出来事があったわけだけど、それが子供への叱り文句になっていると知った時は遠い目をした>>*40。 あまり怖がらせるつもりはなかったのだけれど、どうやら見た目と立場が相まって、叱るときの“怖い存在”として使われるようになったらしい。 しかもまさか、親から子へと受け継がれてるとは。 ……子を育てる親の助けになっていると考えると、まあいいのかしら?] (*48) 2022/01/26(Wed) 0:40:42 |