【赤】 灯守り 立秋[ ふわり。 ] [やがて、立秋の手のひらから飛び出したのは、一匹の赤トンボ。夕暮れの空に浮かびあがった。その行為を何度か繰り返し、数匹の赤トンボが空を舞う。] 『立秋域では、赤トンボは捕まえてはいけないことになっているんだよ』 『人の魂を運ぶとされているからね』 [年寄りの昔話とか、それを聞いた子供の言葉だとか。 色んな人から聞く機会があったかもしれない。 先代の時からこの形だから。] よし。 飛んでいけ。 [その声に呼応して、赤トンボたちは夕焼け空を自由に飛んで、やがて灯宮を目指して視界から消えていった。] (*55) 2022/01/23(Sun) 18:07:00 |