【念】 第11皇子 ハールーン[それは、悪夢の続きかと思った。よく知った天井の紋様は、かつての自分の部屋。抜けられない牢獄のような日々の象徴。 背の高い窓から射し込む陽は、落ちかけていた。目線を動かして側にいる人が誰かを確認して、ひと息つく。夢からは覚めている。何が起きたかもわかっている。 ただ悪夢より酷い現実に戻ってきてしまったことを、その大切な人の姿で確認した。] …………ダレン。 [その人は目を開けた自分に声をかけただろうか。きっとそうだと思う。心配させたかな、ごめんなさい。ここまで運んでくれたのはきっとあなただよね、ありがとう。 そんな日常的な交流よりも伝えなくちゃいけない事がある。恐怖に裏付けされた義務感のようなそれに煽られて身を起こす。 目を、見るのは、無理で。少し視線を落として、それからは口に任せた。] ごめん、今更なんだけど…… 今更言われても、困らせることなんだけど 主従関係を、解消しても、いいかな。 [添える笑顔とは裏腹に、ぼたぼたと涙が落ちた。]* . (!1) 2021/04/23(Fri) 14:14:15 |